建設事業者のみなさまへ

Moiss 人と生きていく壁

天然のリサイクル素材

地球のために、土に還ります。

モイスは、バーミュキライトという天然の粘土鉱物を含んでいます。この鉱物の層状構造がもつ層間活性効果からTVOC(揮発性有機化合物)の吸着力を活用した、新しい健康素材が生まれました。室内の空気をきれいにするという役目、つまり、素材としてのライフ終了後、解体され、回収され粉砕し土に還すことができます(軽量気泡コンクリート粉末肥料としての認定を取得しました)。主成分である石灰、シリカは土へのミネラル肥料となり、バーミキュライトは土壌の中で有機質肥料の保持剤となり、風化してやがては土に還ります。

また、工事現場での端材は細分化し、壁内部や床下に配置することで湿度調整材として活用できます。
大量生産、大量消費を生んだ時代が終焉し、建築材料を供給する生産者の社会的責任が問われる時代。そうした時代の要請に対するひとつの答えがMOISSなのです。

住まいと環境に迫るぞぃ

住環境にもリサイクルが求められる時代

経済発展がもたらした環境破壊

高度経済成長期から現代までのわが国は絶えず「生産と消費」を繰り返し、成り立ってきました。生活の中で最も高額な自動車でさえ10年以上も乗り続けることは稀なほど、乗り替えという短期的な市場が出来あがっています。それはつまり、商品だけを買い換えるというリース文化の定着ともいえます。そして同様に豊かさを実感できない最たるものとして「住環境」をあげることができます。私たちは、慣れ親しんだ生活や環境に日常大きな変化を期待しませんが、国内外を旅した時など文化や生活環境の違いを目にし、驚かされることも多いのではないでしょうか。
世界の都市の豊かな環境は、国の文化の奥行きや歴史的な価値観によって築かれます。それが建築や住宅などの社会ストックとして古来より現代に受け継がれてきました。そこには、建築を自国の社会投資の対象として成立させるための大きなシステムが存在していたように思われます。
ところが産業革命以降、時代が進むにつれ、人間はいつしか自らが自然界の頂点に立ったかのように錯覚し、生態のリズムを変えるようになりました。生命や環境という連鎖関係で成り立っている生態系の循環システムや自然界のリズムを全く無視したライフサイクル。あえていえば19-20世紀という時代は「発展をより具体化し、それに対してあまりにも大きな代償を払った時代」なのかもしれません。それは人間が人間性を軽視し、見失った時代だったと言わざるを得ません。

「エコロジー」から「サスティナブル」へ

70年代に入り、これまでのあり方を批判的にとらえ直すという意味から「エコロジー」(Ecology)という言葉が注目されるようになりました。もともとecoというのはギリシャ語でoikos(家)を指し、 Homeといった居住単位の意味を含みます。それにlogyというギリシャ語のlogs(言語、論理)がつき「家の論理」、つまり「家」本来を指す意味となります。つまりエコロジーを破壊することは、家や家の論理をも壊してしまうということにつながるわけです。 この生態系全体におけるエコロジーのシステム、エコシステムは、「生産者_消費者_分解者」という順序で循環を繰り返します。従って、プラスチックなどの分解できない石油化学製品は、このエコシステムには入らずゴミや公害としてのレッテルが貼られてしまう。この当たり前ともいえる、生態系への配慮こそが住宅の基本的な計画原理ということにつながります。 近年では生分解プラスチックなどの普及もあり、土に還るプラスチックのイメージアップを前面に出しつつある状況です。
今日ではエコロジーといえば、広く社会に浸透し、環境保護運動と同義でとらえているケースが多くみられます。しかしこのエコロジーという考え方の根本には、生態系が共生する中にあって、その中の一生物が人間だという視点を確認する必要があるように思われます。まさに「サスティナブル」(Sustainable)という概念です。「持続可能な」と一般に訳されるこの言葉の概念や考え方が注目されるきっかけとなったのは、1992年の「地球サミット」(環境と開発に関する国連会議)の頃です。地球規模での世界の発展の代償として、人口問題、エネルギー問題や資源の有限性、環境汚染、CO2の増加、オゾン層の破壊、ゴミ問題、リサイクル化など早急に解決を要す緊急のテーマとしてトータルにイメージする内容と認識されるものなのです。
機能性や経済性重視という要求が先行し、それが環境にどう影響するのかほとんど考えることなく歩んだ人類の野望の時代19-20世紀。 今後、「環境に配慮する」ということは、もはや当たりまえのこととして、壊した時間に対してはかりしれない時間を費やしても取り戻さなくてはなりません。
私たちは、これまでの建築材料の供給、資材のあり方の根本を見直し、リサイクルが可能な素材の開発・研究に取り組んでいかなければなりません。

自然エネルギー利用による建築計画

「人と環境の関係性」を具体化したモデル団地として、環境共生住宅が全国に建設されています。風(風力)や光(ソーラーによるエネルギー変換)を取り込み、自然エネルギーを電力に変換し、共用部分などで活用する、いわば一部自給型の熱源装置をもった集合住宅です。
屋根には給湯用パネルや街灯、足下灯などにもソーラーシステムを用い、また風車による風力発電の設備を設け、その電力を井戸水から汲み上げせせらぎの水として循環させながら中庭のビオトープ(自然の生活環境が持つ安定した生物群集の生息する空間)を再生するなど「生命が宿る住まいとまちづくり」をめざした試みとして展開されています。
また、このような環境共生住宅の計画を支える公的な支援制度も併せて整備されています。(社)環境共生住宅推進協議会では、環境共生住宅のガイドラインを設け補助の対象を掲げています。 例えば、ソーラーや屋上緑化、ゴミ処理などそれぞれ対応する項目に対して審議し、補助を行う形体です。 また住宅金融公庫の融資対象には、バリアフリー・段差・手摺りの設置など高齢化への対応、それに加えて耐久性のある構造上の配慮、省エネルギー上の問題として太陽エネルギーなどソーラー設備の適応に対して、割増融資の対応がなされるなど、普及へ向けて積極的な対応策を図っています。
時間を経てこの人工的な自然空間がどのように変化し、自然化していくのでしょうか。その成長の追跡検証も大事なデータとなると同時に、そこに住む生活者らによる長期的な日々の観察や評価こそが、見失った自然力を再認識させるものとなるでしょう。

住宅のリサイクル化ーストック指向の新築住宅の技術化

石膏ボードの歴史は内装ボードの歴史だといえる。その歴史を辿れば、明治28年アメリカのAugustin Sackettという人物が石膏を芯とし、それにウールフェルト紙をサンドイッチした形の積層板を発明したことに始まる。その後、明治35年から改良が加えられ、当時、石膏ボードのようなものを手作りで作っていた東洋建材工業所に吉野石膏が鉱山から直に採取した石膏を粉砕した焼石膏を供給し、大正10年に現場使用されていたという。その後、この厚さ6mmの製品が帝国ホテル(大正12)、丸の内ビル(大正15)などの内壁、天井仕上げとして採用されている。東洋建材工業は後、日本タイガーボード、日本耐火ボードと社名を変更し、昭和25年に吉野石膏に吸収合併された。この石膏ボードが本格的に国内で拡大製造される のは、昭和20年以降のことである。昭和22年(1947)に石膏ボードの製造技術が公開され、各地で生産されるようになった。また、この頃になると建材 に規格をもうけ標準化の動きが活発化される。なかでも、日本工業規格(JIS)は、昭和24年施行の工業標準化法(木材、合板、床材の規格は、昭和26年 施行の農林物資規格法に基づく日本農林規格:JAS)に基づき新たに規定されたものである。加えて、昭和34年にはメートル法が全面的に実施されたことを うけ、建築のモジュール化が昭和32年頃から検討され、その成案は昭和38年4月からJIS化、普及されていく。
これらは仕上げ材を標準化するための指標として、後の高度成長時においてビル建築、また量産化住宅としてのプレハブ住宅の需要と相まって流通され、施工現場での断固たる体制をつくりあげる。
もうひとつ、石膏ボードの発展には大きなポイントがある。石膏ボードには戦時中より政府が指導していた廃物利用の産業モデル建材として位置づけられた点である。石膏は電力生産、また化学肥料工場などから出る副産石膏、紙は古紙、混和物に木屑をいれ廃物を利用した再処理ボードを生産したからである。これは いわば、国策の一部として、大量に消費する建設には必要不可欠な内装材料として半ば必然的に組み込まれたものといえよう 。

昭和25年(1950)、当時の建設省住宅局により天井、内装壁用の不燃性板として6mm厚の石膏ボードが指定され、この頃を契機に全国的に需要が増大した。昭和26年にJIS A 6901石膏ボードが新たに制定され、昭和34年には建築基準法により内装制限が規定されたことを受け、防火建築材料として準不燃材料に指定された。昭和44年(1969)法定防火建築材料として不燃材料、準不燃材料にも認定された。この間、石膏ボードは二重使用の方法、他種建材との複合使用などの確立により用途が拡大し、遮音構造・防火構造・耐火構造などと多数指定され、今日においても、その安価な価格、高い防・耐火性能から内装への完全定着化した素材として安定を誇っている。しかしながら、21世紀の環境問題、また循環型社会に向けての国レベルの動き、建築資材における廃棄問題など、これまでの石膏ボードの処理についてもメーカーが再処理工場を建設するなどの動きを見せている。この背景には、石膏ボードのリサイクル問題また建築資材の不法投棄として石膏ボードが含まれていること、加えて不法投棄の容量どころかその計り知れない最終処分場での硫化水素ガスの発生が問題化されはじめている。現在処分場に持ち込まれている解体現場からのボードは、主に昭和55年代以前に製造されたものだという。かつての生産量の推移からみると、廃棄されるボードはこれからも膨大に増えることは必至である。真にリサイクルを行うとするなら、この費用もまた、だれかが負担することになる。そのツケはこれまでの政府の法令である家電リサイクル法などを見ても最終的には消費が負担するという構図となるのは必至である。
戦後、建築内外装材料メーカーは、半世紀以上もの間、石綿を使用した建材の恩恵に預かってきたといえる。もし戦後、石綿が建築用資材として調達が出来得なかったらここまでの建材の発展を見ただろうか。世界的にも石綿の使用は全面的な廃止という制限を受けるなか、今後使用が出来ない状況となる。またそれと同時に石膏ボードという材料自身も地球環境、またリサイクルという大きな問題を抱えている。
21世紀は「環境の時代」といわれる。まず身近なところにある居住や生活においてゴミの問題やリサイクルを意識する必要がある。そして、真に安全な商品、安心な環境を見極める消費者の眼をもつことからはじめることが必要となろう。

MOISSの主成分、バーミキュライトについて

MOISSは何から生まれたか?

MOISSの白色の基材はケイ酸カルシウム水和物でできています。このケイ酸カルシウム水和物の生成には、珪砂粉末、消石灰、パルプを水に分散させ、紙を漉く要領で層状に成形します。 その後、高温高圧の蒸気によるオートクレーブ養生を行います。
常温では不活性なシリカもオートクレーブ養生によりカルシウムと化合して、 強固なケイ酸カルシウム水和物=トバモライト(Tobermolite,5CaO・6SiO2・5H2O)という強度の高い、安定した化学反応物を生成することができます。 このセラミックスであるケイ酸カルシウムの基材に粘土鉱物であるバーミキュライトを加えることで、より基材の骨格と強固に一体化された構造を保ちながらMOISSという素材が生まれました。

MOISSに用いたバーミキュライト

MOISSの主成分であるバーミキュライトは、「粘土鉱物」です。粘土鉱物は粘土の主要な構成物質で、粘土の性質の源といえる物質です。これらは、結晶質鉱物と非晶質鉱物に大別されますがその大部分が結晶質ケイ酸塩鉱物(フィロケイ酸塩)です。
この特徴は、(1)含水フィロケイ酸塩鉱物(2)多くは層状結晶構造をもつ(3)大きなサイズの結晶は産出しない、などです。これまで建築資材・材料分野では、バーミキュライトを1,000℃以上の高温で加熱し、結晶水が脱水して発泡し、へき開部分がアコーディオン状に剥離して開くことで、軽量で容積が大きくなるという特性を生かした断熱材が主でした。これはまた、塩基置換容量が高いため養分の吸着や保持性能を生かした農・園芸用資材の有機肥料などとして用いられていました。

MOISSは、南アフリカの鉱山から採取した鉱物の性質を変化することなく、フレッシュなバーミキュライトとして成形後も生き続けます。このように初めて建築建材に用いることにより、層状構造のもつ層間活性効果を最大限に利用し、健康建材としての新たな命と大きな付加価値を与えることに成功したのです。
たとえば、板材としての粘りやタフネスがあります。バーミキュライトは基材であるトバモライトと結合し、クッション材としてセラミックスでありながらも強靭な曲げや、しなりといった、従来の建材にない変形性状・粘りを可能にしました。また、湿気やシックハウスを生じさせる要因である揮発性有機化合物(TVOC)をバーミキュライトの冊子状の結晶層間が吸着します。結晶層間には、交換性の陽イオンをもち、溶媒中で各種金属イオンを選択的に交換するという効果から、自然に室内空気の質を改善していきます。これまで、室内湿度の吸放湿性能試験では約50%RHと安定した性能を維持、またホルムアルデヒドの吸着試験では、再放出させないなどの高い効果が確認されました。
このナノテクノロジーの技術分野は、現在研究委託進行中の早稲田大学プロジェクト研究のさらなる研究成果として今後、未開のバーミキュライトの性能解明とともに大きな可能性と期待が寄せられています。

バーミキュライトとは

バーミキュライト(Vermiculite:蛭石)は、外観が雲母(Mica)とよく似た粘土鉱物で、鉱物名はラテン語由来で、焼くと膨張して蛭が血を吸ったように見えることからつけられました。通常使われるものは全て焼成品であり、最も一般的に目にするのは農園芸用土壌改良材です。
一般化学組成は次のように表されます。

ここで、[ ]内は結晶母体となる層状の珪酸塩層であり、層間を陽イオン(M+,M2+)と水が占有しています。層間の陽イオンは一般にマグネシウムとカリウムが主ですが、外界の陽イオン(または分子)と容易に入れ替わり、後述するように有害物質の吸着に関与します。
また水分子は、周辺雰囲気の湿度の変化によって出入りし、室内の湿度調整の役目をします。更に、珪藻土、アロフェン、ゼオライト等と違って、化学的に安定なため、建材原料として使用された場合にもその性質を維持します。

MOISSに用いたバーミキュライト

MOISSに用いたバーミキュライトは、南アフリカ共和国トランスバール地方パラボラ鉱山産のものです。この鉱山は、直径約2km、地表からの深さ約750mの巨大な露天掘りで銅鉱石を採掘しており、その隣接した鉱区に大量のバーミキュライトを産出しています。採掘されたバーミキュライトは、粉砕され、粒度別に分けられて出荷されますが、最後に残った微細な鉱屑(尾鉱)は廃棄されています。粒度別に出荷されたバーミキュライトは、通常、加熱処理により発泡させ、軽量多孔質の焼成物にして利用されますが、この発泡焼成のときに本来の結晶構造は破壊されます。
建材の混合物としての利用には、むしろ粒子が細かいこと、バーミキュライト本来のイオン交換性や分子吸着能を発現させるために結晶構造が維持されていることが要求されます

そこでMOISSには、鉱山で廃棄されていた微粒の鉱屑(尾鉱)を、焼成せずに混合しました。これにより、(1)これまで廃棄物であった鉱屑(尾鉱)を再利用したこと、(2)焼成プロセスを省略したこと、で低コスト化と鉱屑(尾鉱)の減容と新規原料化が同時に行われました。
尚、この鉱山ではアスベスト混入に係わる厳格な品質管理を徹底し、検出限界点(0.001%)に於けるアスベストフリーを確認しています。

MOISSの板材としての撓み性

MOISSは,珪酸カルシウム水和物(トバモライト・図3)のマトリックス中に、バーミキュライトを均一に一方向に分散した材料です。大きなバーミキュライト結晶の周りに微細なトバモライトの板状結晶が成長し,マトリックスと結合しており,バーミキュライトの端面でのトバモライトのエピタキシャル成長が示唆されます。即ち、バーミキュライトはMOISS製造時の反応促進剤としての役割もしていると考えられます。
MOISSは板材として粘り強く、かつ柔軟性があります。MOISSの3点曲げ試験を行うと、従来の珪酸カルシウム板(以下、ケイカル板)の1.5倍のたわみ量を示し、セラミックスでありながら、塑性変形が認められます。大きくたわむ材料では、通常、強度が低くなるのですが、MOISSの曲げ強度は10MPa(100kgf/cm2)で、ケイカル板と同等です。水分を含ませると、たわみは更に増え、大きく曲げることができます。これは、バーミキュライトのすべりによるものです。バーミキュライト結晶の層間には陽イオンと水分子があり、外力によって層間にすべりが起こります。外力は層間のすべりによって吸収され、変形が起こり、マクロな破壊が起こりません。外力がなくなれば、すべった層間は再び結合します。
MOISSはビス止めが可能です。ビス止めの際に発生するせん断力は、バーミキュライトの層間すべりによって吸収され、層間復元力で、ビスを固定します。更に、MOISSは切削加工に耐えるなど「人工木材」と言ってもよい特性があるので、従来の建材では考えられなかった無接着工法が可能になりました。

「環境共生」という名の集合住宅

住宅のリサイクル化ーストック指向の新築住宅の技術化

2003年はリフォーム市場が注目されているという。この背景には1970年代に建設された中層住宅、戸建住宅のおよそ3分の2がこの時期以降に建設されたものといわれて、建設後30年を過ぎ、老朽化して建て替えを検討する時期が、ちょうどぶつかるというわけだ。逆に言うと、この時代はいかに古いものを壊して新しいものを造りつづけたかということを物語っている。90年半ばになると社会問題化し、国も政策に乗り出した。
1930-40年代に建設された日本の木造住宅は、襖や畳、欄間、仕口には金物を用いない柱や梁など、容易に解体し移築可能な材料で造られており、再利用ができました。
例えば、東京西部地域ではスタイロフォームの畳床が用いられるまでは、畳は稲城の農家で梨畑の苗床として再利用され、柱や梁は別の住宅の増築などの構造材に使用され、残りは少なくとも銭湯の薪になっていたといいます。 しかし、現代の木造住宅は、断熱材で閉じ込めた木質パネルのように、現場での生産性を上げるために部材のハイブリッド化が進み、再生しにくくなっています。リサイクルされた建材を用いることがあっても、住宅自体の再利用まではほとんど考えられていません。また、日本の住宅ほどプラスチック系建材をハイブリッドに用いている住宅はないといわれるように、環境問題を引き起こしかねないものに囲まれた世界で最も危険な国、それが日本といえるのかもしれない。

国の建設ビジョンが目指すもの

資源の有効利用、リサイクル化が叫ばれる昨今の時代背景、そして老朽化しても建て替えを行う時代ではなくなったとしたら、つまり、今後、長期にわたって利用できるものを注意深く計画、建設する必要性から、将来、段階的に行なわれるだろう再生行為を効率的に行えるような準備をしておくことが必要だという考え方である。わが国の例で言えば、1980年以来、研究と実施対応への適応が進められてきた「センチュリー・ハウジング・システム」(CHS)がそれにあたる。これは、旧建設省・現国土交通省が「住機能高度化プロジェクト」の一環として進めてきた研究成果であり、文字どおり「1世紀にわたって快適に居住できる住宅を実現するための仕組み」を構築する試みであった。
その仕組みは、以下にまとめられる。

  1. 耐用年数―部品の交換性をよくする設計手法
  2. 部品の交換性を高める寸法計画上のルール化
  3. 居住者のライフステージの変化に対応する間取りを変えるなどの可変対応技術の開発、適応

しかし、CHSにおいても、躯体以外の部分は交換することを前提に長期対応計画が組み立てられていたが、交換された部品の再利用については考慮されていなかった。近年の環境への配慮、負荷をかけないというモノづくりの立場に立てば、再利用も重要な検討項目であり、これに躯体自体の解体・再利用法の検討を加えれば、建築の部分が解体後も再利用できる建築物「リサイクル・ビルディング」が実現するという考え方である。
近年言われる、SI(スケルトン・インフィル)もこの方向性の延長線上の話であり、構造である骨組に100年という耐久性を持たせ、内部をライフスタイルなどにあわせて自由に変更、更新できるという可変住空間的な考え方である。
建物を一度解体し、部分ごとに再利用するというプロセスを考えれば、まず、それぞれの部分が再利用に支障の少ないかたちで分離、交換ができることが前提となる。これについては、歴史を溯れば1851年ロンドン博覧会の後に解体・移設されたクリスタル・パレスを皮切りに、1985年筑波科学技術博覧会のパビリオンなどの博覧会の施設がひとつのリサイクル建築のあり方を継承する考え方であった。また身近なところでは仮設プレハブの例など、工業化手法や構法の前提条件である乾式工法を用いることが実現の可能性を大きく左右することは間違いない。

建材、住宅もリサイクルの時代へ

ドイツは、特に環境に対する考え方や規制が厳しい国だといわれる。連邦制のためか各州が実施法をそれぞれ整備し、生産者から消費者へ一方通行の産業構造が根強い日本と異なり、まず環境を守ることが社会全体において将来コストを低減化し、モノを循環させるということが新しい産業を興し、経済も活性化していくという考え方がしっかりと社会に根づいている。
わが国は、資源循環型社会を目指し、建築物で消費した主要資材(資源)をできるだけ再活用しようとする「建設リサイクル法」(2001年)など環境関連の法整備に伴い再資源化を義務づけた。同法ではコンクリート、コンクリート及び鉄からなる建設資源、アスファルト・コンクリート、木材などの廃材は解体時に再資源化することを義務付けるもので、建築発注者は、分別解体作業の計画案などを都道府県知事に届け、元請業者も再資源化の実施状況などを発注者に報告することが必要となった。同法の対象となるのは、住宅関連では延べ床面積80平方メートル以上の建築物解体のほか、500平方メートル以上の新築・増築である。これを受けてハウスメーカー各社の環境対策も急ピッチに進んでいる。これまでの、いわば造り、売るだけの住宅販売から住宅を下取り、持ち帰ったユニットや部分などをリニューアルして再販売するという住宅再生のサービス事業や住宅解体時の木材や一般廃材木を再加工し、リサイクル木材として再利用する動きなど一部の住宅メーカーで出てきている。
私たちをとりまく住環境はますます変化が予想される。長年にわたり慣れ親しんだ大量生産・大量消費そして大量廃棄といった生産と消費のパターンを見直し、資源とエネルギーに依存しない生活、社会を目指し、構築していくことが私たちに要求されているもっとも重要な問題なのである。

各種リサイクル法の施工と推進

ここ数年間に様々なリサイクルに関する法案が施行されている。これらは環境基本法に位置付けられる、「循環型社会の形成推進基本法」と呼ばれる基本的枠組み法として構築されたものである。

建設関係としては、建設工事に関わる資源の再資源化などに関する法律(建設リサイクル法)が平成12年に公布され、本年、平成14年5月より施行された。これにともない、コンクリート、アスファルト、建設発生木材の再資源化などの実施が義務化される。この法案の成果は今後の建築業界全体の姿勢や尽力による。
建設解体時における発生木材の排出される量は、平成2年度には750万トン、内31%が再資源化量であったのに際し、平成12年度には83%と数値を伸ばしている。木材は分別し、粉砕が比較的容易であることからリサイクル可能な資材であり、国土交通省では建設リサイクル法の実施を経て、今後、縮減量を含め再資源化の目標値を95%に設定し、目標値をクリアする方向で進んでいる。

再資源化における業界を超えた新規ビジネス

住宅業界では、太陽光発電整備や生ゴミ処理機などのエコ商品が台頭する一方で、解体時に出るゴミのリサイクル問題が今も問題化されている。 なかでもプラスチックや塩化ビニールなどの石油化学製品の住宅部材などに占める割合は大きいといえる。これまでは廃棄木材に混じって分別できずに焼却し、 ダイオキシンの発生の問題もしばしば取り上げられた。近年なって大手鉄鋼メーカー各社が独自の熱処理技術を生かし、廃棄プラスチックのリサイクル事業に積極的に乗り出すなどの動きをみせ、 次のステップとして本格化する一般ゴミの焼却なども視野に入れ、回収に対応する仕組みを構築しつつあるという。これはいわば、新たなビジネス事業に打って出る企業戦略だが、 これまで別々のカテゴリー、そしてジャンルで便利さや使いやすさ、そして安さといった製造についた企業が、その業務枠を取り払い、これまでの生活に氾濫している環境資源の循環というテーマに向けて知恵を出す時期にきている。

<出典>
「建設リサイクルの推進について」国土交通省総合制作局、平成14年10月より

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