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記事公開日 : 2025/11/27
「防火認定の壁」について、「不燃・準不燃・難燃の違いは何?」「耐力面材とはどう関係するのだろう?」といった疑問を抱く施工管理や設計のご担当者様は少なくありません。
特に、中小規模の建設プロジェクトでは、限られた時間の中で法令を遵守し、最適な材料を選定することが求められます。
この記事では、建設現場で不可欠な「防火認定の壁」が一体何を指すのか、その基本から、壁の防火性能を決定づける不燃・準不燃・難燃の3つの性能区分の違いについて、わかりやすく解説します。
「防火認定」とは、建築物の火災に対する安全性を確保するために、建築基準法に基づいて定められた制度です。
火災が発生した際に、建物の延焼を遅らせ、人命の安全を確保することを目的としています。
壁の防火認定は、壁が火災時にどの程度の時間、燃え広がらず、また、熱や煙を遮断できるかという性能を国が認めることを指します。
この認定を受けることで、特定の建築物や部位に防火性能を持たせることが義務付けられています。
この認定は、単に「燃えにくい」という感覚的なものではなく、厳格な試験と評価基準に基づいています。
防火認定された材料は、その性能に応じて大きく3つの区分に分けられます。
これらは、火災時に燃焼しない時間や、有害な煙・ガスを発生させない時間の長さによって区別されます。
これらの区分は、建築物の用途や部位によって使い分けられ、火災時の安全性を確保するために重要な役割を果たします。
建築基準法では、火災時の安全確保のため、特に以下の2つの概念に基づいて防火材料の使用が義務付けられています。
火災が発生した際に、火が燃え広がるのを防ぎ、避難経路を確保するために、建築物の内部仕上げ材(壁、天井など)に防火性能を求める規定です。
特に、不特定多数の人が利用する特殊建築物(病院、学校、ホテルなど)や、避難経路となる廊下や階段、火気を使用する室(台所、ボイラー室など)において、より厳しい内装制限が適用されます。
敷地境界線や道路の中心線からの距離によって定められる範囲で、火災が隣接する建物や敷地に延焼するのを防ぐために、外壁や開口部に防火性能を求める規定です。
この部分に設置される外壁は、防火構造や準防火構造とする必要があり、使用する壁材も防火認定を受けたものである必要があります。
これらの規定は、建築物の種類や規模、立地条件によって適用される基準が異なるため、設計・施工時には細心の注意が必要です。
3つの防火材料区分は、それぞれ国が定める厳しい基準をクリアする必要があります。
その最も大きな違いは、火災時の「燃焼しない時間」にあります。
それぞれの材料に求められる具体的な性能時間は以下の通りです。
これらの時間は、火災発生から避難が完了するまでの時間を想定し、人命保護の観点から設定されています。
上記の時間内において、各材料には以下の要件を満たすことが求められます。
これらの要件は、材料単体だけでなく、その厚みや構成によっても性能が左右されるため、製品ごとに詳細な仕様が定められています。
前述の通り、建築物の用途や部位によって、求められる防火性能は異なります。
病院、学校、劇場、ホテルなどの特殊建築物や、共同住宅の共用廊下・階段などの避難経路では、火災時の人命保護を最優先するため、不燃材料または準不燃材料の使用が義務付けられるケースが多くなります。
台所やボイラー室など、火気を扱う可能性のある部屋の内装材にも、火災の発生・延焼リスクを低減するため、不燃材料または準不燃材料の使用が求められます。
上記以外の一般的な居室では、比較的緩やかな基準が適用され、難燃材料や、防火性能が求められない材料の使用が許容される場合もあります。
設計図書や建築基準法の詳細を正確に読み解き、適切な材料を選定することが、施工管理・設計担当者にとって非常に重要です。
壁の防火認定は、材料単体だけでなく、その組み合わせや施工方法によっても性能が左右されます。
そのため、認定方法を理解し、適切に確認することが極めて重要です。
防火材料には、大きく分けて2つの種類があります。
建築基準法施行令や関連告示によって、その防火性能が明確に定められている材料です。
たとえば、コンクリート、モルタル、厚さ9mm以上の石膏ボード、鉄鋼などは、特定の条件を満たせば「不燃材料」として扱われます。
これらは、個別の認定試験を受ける必要がありません。
上記で定められていない新しい材料や、複数の材料を組み合わせた複合材料、特定の工法などについて、個別に性能試験を行い、国土交通大臣がその防火性能を認定したものです。これらの材料や工法には、それぞれ固有の「大臣認定番号」が付与されます。
特に大臣認定材料を使用する際は、その認定番号と適用範囲を正確に把握することが不可欠です。
壁の防火性能は、表面の仕上げ材だけでなく、その下地となる耐力面材(モイスTM 耐力面材、石膏ボード、合板、木材など)、断熱材、内装材、さらには構造材(柱、梁)までを含めた「壁全体の構成」によって評価されることが一般的です。
例えば、「防火構造」や「準防火構造」の壁は、表面材と下地材の組み合わせによって、特定の時間(防火構造は60分、準防火構造は30分)にわたり、火炎を遮断し、裏面温度の上昇を抑制する性能が求められます。
この際、耐力面材(モイスTM耐力面材、石膏ボード、合板、木材など)が、単に建物の構造耐力だけでなく、壁の防火性能の一部として認定されているケースも少なくありません。
特定の下地を組み合わせることで、防火構造や準防火構造の認定を取得している製品もあります。
設計図書で指定された耐力面材の種類や厚み、その上から張る石膏ボードの厚みや枚数、ビスの間隔まで、細かく規定されている場合がありますので、注意が必要です。
※モイスの防耐火認定一覧はこちらからご覧いただけます。
施工管理や設計のご担当者様は、以下の方法で防火認定の確認を徹底してください。
最も基本となるのが、設計図書や特記仕様書に記載されている防火材料の種類、大臣認定番号、工法、使用部位の確認です。
大臣認定材料を使用する場合は、必ずその認定書原本またはコピーを入手し、記載されている材料の仕様、適用範囲、施工方法(下地材、留め付け方法、目地処理など)が、実際の計画と合致しているかを確認します。
現場に搬入された材料には、メーカー名、製品名、そして「不燃」「準不燃」「難燃」といった防火性能を示すラベルが貼付されています。
特に大臣認定品には、大臣認定番号が記載された施工管理ラベルが貼られていることが多いため、これを設計図書と照合し、指定された材料が使用されていることを確認します。
材料が正しくても、施工方法が認定書通りでなければ、防火性能は発揮されません。指定された下地材のピッチ、ビスの種類と間隔、目地処理の方法など、細部にわたる施工状況を監督し、記録を残すことが重要です。
これらの確認を怠ると、建築基準法違反となり、重大な手戻りや、万が一の火災時に甚大な被害につながる可能性があります。
「防火認定の壁」は、建築物の安全性と人命保護のために不可欠な要素です。
不燃・準不燃・難燃の3つの性能区分は、火災時の燃焼しない時間と、防火上有害な現象を起こさないための具体的な要件によって明確に区別されています。
施工管理や設計のご担当者様は、建築基準法における「内装制限」や「延焼のおそれのある部分」の規定を理解し、設計図書に基づいた適切な防火材料の選定と、その認定内容(大臣認定番号、適用範囲、施工方法)の正確な確認が求められます。
材料単体だけでなく、下地材との組み合わせによる認定や、製品ラベル、施工管理ラベルの照合、そして現場での確実な施工管理を通じて、法令遵守と安全な建築物の実現に貢献していきましょう。
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