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記事公開日 : 2025/10/30
地震の多い日本では、建物の耐震性を高めることが重要であり、耐力面材は欠かせない建材の一つです。
しかし、種類や選び方、施工方法を間違えると、その性能を十分に発揮できない可能性があります。
この記事では、耐力面材の基本的な知識から、メリット・デメリット、そして筋交いとの違いをわかりやすく解説します。
耐力面材とは、地震や風などの水平方向の力(横からの力)に耐えるために、建物の骨組みに取り付けられる板状の建材を指します。
木造建築において、建物のねじれや倒壊を防ぐ「壁」として重要な役割を担います。
耐力面材は、柱や梁といった構造材と一体化することで、建物の耐震性能を向上させます。
特に、地震の多い日本では、この耐震性を高めることが住宅の安全性確保において非常に重要視されています。
木造建築の耐震補強において、耐力面材と並んでよく用いられるのが「筋交い」です。
両者は同じ耐震補強の役割を持ちますが、その構造や性能には違いがあります。
耐力面材は、建物の壁全体で水平方向の力に抵抗する「面」として機能します。
柱と柱の間に板状の面材を張ることで、壁全体で外からの力を受け止める構造です。
この方法は、地震や強風による揺れを面全体で分散させることができるため、高い耐震性を発揮します。
また、耐力面材は、面で構造を支えるため、外壁下地や気密、断熱、防火などの性能も同時に持たせることが可能です。
筋交いは、柱と柱の間に斜めに渡すかたちで取り付ける木材や金物です。
三角形を形成することで、構造の変形を防ぎます。
筋交いは点で力を受け止めるため、耐力面材に比べて壁の内部に空間が生まれやすいのが特徴です。
その反面、筋交いだけでは壁の面としての機能を持たせるためには別途、壁材が必要となります。
耐力面材には、筋交いにはないいくつかのメリットがあります。
まず、耐力面材は面全体で力を受けるため、筋交いよりも高い耐震性能を持つ製品が多いです。
たとえば、建築基準法で定められた壁倍率(壁の耐震性能を表す指標)において、面材の方が筋交いよりも高い値を持つ傾向があります。
また、耐力面材は、壁下地材としても機能するため、施工効率が良いというメリットもあります。
これにより、工程を短縮し、コスト削減につながる場合があります。
さらに、製品によっては、気密性や断熱性、防火性能などを併せ持つものもあり、建物の総合的な性能を向上させることができます。
一方で、耐力面材にはいくつかのデメリットも存在します。
一つは、筋交いよりもコストが高くなる傾向がある点です。
特に、高性能な製品を選ぶと、建材費が全体的に上昇する可能性があります。
また、耐力面材は壁面全体に張る必要があるため、窓やドアなどの開口部を設ける位置やサイズが制限される場合があります。
設計段階で、耐力面材の配置を考慮することが重要です。
耐力面材を選ぶ際には、その種類と性能を正しく理解することが不可欠です。
耐力面材には、主に木質系と無機質系の2種類があります。
構造用合板、OSB(配向性ストランドボード)、MDF(中密度繊維板)など。
これらの面材は、木材の特性を活かしつつ、強度を高めたものです。
特に構造用合板は、JAS(日本農林規格)によって厳しく性能が規定されています。
窯業系、石膏系など。
これらは、不燃性や防火性に優れているのが特徴です。
建物の防火性能を高めたい場合に選択されることが多いです。
耐力面材の性能を客観的に判断するためには、「壁倍率認定書」や「大臣認定書」を確認することが非常に重要です。
壁倍率認定書は、製品の耐震性能を示す指標であり、数値が高いほど耐震性能が高いことを意味します。
また、大臣認定書は、国土交通大臣が個別に性能を認定したものであり、特定の性能を証明するものです。
これらの書類を確認することで、製品が建築基準法に適合しているか、そしてその性能が設計通りのものであるかを確かめることができます。
耐力面材は、地震や強風から建物を守るために不可欠な建材であり、筋交いにはない多くのメリットを持っています。
耐力面材の選定にあたっては、コスト、性能、施工性を総合的に考慮することが重要です。
特に、素材による違いや、壁倍率認定書・大臣認定書を確認することで、建物の耐震性や安全性に大きく影響します。
本記事で解説したポイントを参考に、設計や施工管理に役立てていただければ幸いです。
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