私たちが暮らす室内には、実に多くの化学物質が潜んでいます。壁、天井、床、畳など表面積が大きいところは、それだけ放出される化学物質の量も多くなり深刻です。そうした場所に多用されているのがホルムアルデヒド。合板、パーティクルボード、壁紙用接着剤等に含まれる化学物質で、高濃度に連続して曝露された場合は、慢性呼吸器系障害や発ガンの原因にもなるといわれています。
この他、塗料の溶剤に使われるトルエン、キシレン、木材保存剤、材料をやわらかくする可塑剤、シロアリなどの防蟻剤など、部屋の空気中にはたくさんの有害物質が充満し、家族の健康をおびやかしているのです。
こうした有害物質は建物だけに使われているわけではありません。ソファ、カーペットなどのインテリアや食器棚からも多く放出されているのです。さらに、普段なにげなく使っている殺虫剤やカビ取り剤、防虫剤の危険性も無視できません。
ご存知ですか?人間は1日に約20リットルの空気を体内に取り入れているといわれています。
家にいることの多い主婦の方や小さなお子さん、そして赤ちゃんは、とくに大きな危険にさらされているといえます。水や食物の有害性に気を配る人は、年々増加しています。ミネラルウォーターを購入するなど、ひと昔前では考えられないことでした。これからは、水や食物と同じように、空気の質に目を向けるべきではないでしょうか。
合板・バーティクルボードなどに使われる接着剤の原料として利用。壁紙、壁紙用接着剤の防腐剤としても利用されています。
ホルムアルデヒドは米国産業専門家会議において「人に対する発ガン性が限られた疫学調査、または動物実験で疑われた物質」として認定されています。ホルムアルデヒドを含む空気を吸入した場合の人体への影響については、一般的に0.08ppmから臭いを感じることが多いとされ、それ以上の濃度では0.4ppm程度の濃度で目がチカチカしたり、0.5ppm程度でのどが痛くなる場合が多いことが報告されています。また、慢性的な影響ではアレルギーの症状に影響があることも報告されています。
(2003年7月1日、規制対象化学物質として認定)
接着剤や塗料の溶剤などに利用されています。
トルエン・キシレンを含む空気を吸入した場合の人体への影響については、一般的に200ppm程度の微濃度で倦怠感や知覚異常、吐き気等が多くなることが報告されています。
木材の防腐・防蟻防虫及び防カビを目的とした薬剤で、土台などの木材の処理に利用されています。
木材保存剤、防蟻材には有機リン系の薬剤やピレスロイド系の薬剤などが含まれていることがあり、これらを含む空気を吸入した場合、 倦怠感、頭痛、めまい、悪心、嘔吐、くしゃみ、鼻炎などの症状を示す場合があります。
白蟻による建物などの被害を防ぐために用いられる薬剤で、土台などの木部の処理や土壌の処理に利用されます。
クロルピリホスは、国土交通省での規制対象化学物質に認定され、 農業やシロアリ駆除などに広く使われている有機燐系殺虫剤で、昆虫にも有効です(2003年7月1日告示)。人への中毒症状は、頭痛・筋肉の攣縮・衰弱・発汗・流涎・肺水腫、被ばくが重度の場合は、意識消失・けいれん・死亡にいたるケースもあります。
プラスチック(ポリ塩化ビニルなど)の材料に柔軟性を与えたり、加工をしやすくするために添加する薬剤。ビニールクロスや合成樹脂系のフローリングなどに利用されます。
可塑材を含む空気を吸入あるいは接触した場合、目や気道を刺激することがあることが報告されています。
家にいる時間が発症を誘発するシックハウスは女性、とくに主婦層やまだ抵抗力の少ない幼児などに多くみられます。汚染された室内に長く滞在する方々の発症が多いことから、家にいる時間が発症を誘発するという見方もされています。
たしかに、室内環境に残留する汚染物質は多種多様です。シロアリ駆除の殺虫剤、洋服に入れる防虫剤やタンスなどの防虫加工、フローリングのワックスや壁紙の可塑剤、塗料、内装の接着剤、プラスチック製品やビニール製品、新聞の折込広告の印刷インクやコピー紙に使う熱で定着するトナーなどに至るまで膨大です。あた、過敏が過度に進行すると洋服などの化繊にも反応するなど、きわめて敏感にカラダのセンサーが感知するため、その範囲は想像以上に広いと考えられます。
現在ではこれらの汚染物質に関する問題は、住宅だけに限ったことではありません。学校をはじめとする様々な公共施設で、化学物質による体調不良の報告がなされているのです。